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HOME > 有料メールマガジン『週刊 岡本吏郎』 > TAROくんの頭の使い方 > 第5章 いろんなことのまとめ(岡本節とも言う)(4)【年初なので幕間】どうにもこうにも決まってる・・

(4)【年初なので幕間】どうにもこうにも決まってる・・

今回は、私がいろいろなところで引用している、
小林秀雄さんの言葉からはじめます。

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人は様々な可能性を抱いてこの世に生まれてくる。
彼は科学者にもなれたろう、軍人にもなれたろう、小説家にもなれたろう、
しかし、彼は彼以外のものにはなれなかった。これは驚くべき事実である

(小林秀雄)

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これは本当に驚くべき事実です。

昔、富山港に海王丸という訓練船を見に行った時のこと、
妻が突然つぶやきまました。
「私の同級生は、この船に乗っていたんだよね」

私は、この呟きに過剰反応しました。

この海王丸という訓練船に乗っていたということは、
その同級生は中学を卒業して、船乗りの道を選んだということです。

そんな道は、中学生の私には選択肢にものぼりませんでした。
世の中にそのような選択肢があったことさえ知りません。

しかし、妻の同級生は、その選択肢を知っていたうえに、
それを選んだのです。

これはどういうことなんだ・・と私は反応をしてしまったのです。

日本の中学生なんて、同じようなテレビを見て、同じような雑誌を見て・・、
ほとんど状況なんて変わりません。
それなのに・・。違うのです。
ほんのちょっとの状況の違いが、全然、人生を変えてしまう。
だから、荘子の言う「心の働きは無限」というのは、
「状況」の中で無限なんだということでしょう
(専門家や老子には、何を言っている!と言われるかも?)。

では、その状況の差は、どうして生まれるのでしょうか?

船員を目指した妻の同級生に起きて、
私に起きなかった状況は何だったのでしょう?

そして、同じ会社に入社し、同じ環境で切磋琢磨しながら、
その会社を辞めてしまった私と
今も会社に残る同期の仲間たちの差は何でしょう?

ただ、わからないなりに、
こういうことを考えていると、
一つの想いは浮かびます。

それは、

どうして、オレなんだ・・。

という想いです。

今、こうして、毎日を生活している自分。

仕事があり、妻や子がいて、
田舎に理想の家がある。

それが自分の状況なのです。

どうして、オレなんでしょう?

それは、誰でも良かったはずです。

それは、自分が船員にならなかったことよりも不思議です。

小林秀雄さんは、

「しかし、彼は彼以外のものにはなれなかった」

と言いますが、

私は単純に、それを「驚くべき事実」とだけとらえることはできません。

「5%しか勝てない」とかいろいろなことを書いてきましたが、
そんなことはどうでも良い・・感じもするのです。

やはり、根拠が知りたいのです。

でも、

運?

そうかもしれません。

理屈なんて、どうでもよくて、
全部、宝くじのようなもの。
そうなのかもしれません。

そろそろ、何年も続いたこの連載の
終了が近くなって思うことは、
このことです。

ただ、もう一つ思うことがあります。

「どうして、オレなんだ?」
という思考は、とても健全だと
我ながら思うことです。

そして、
そこが、
その感じが、
その気分が、
自然に出てくるところが、
もしや、答えか?

と思うことがあります。

そして、そして、
できたら、この「どうして、オレなんだ?」
という気分を死ぬまで持っていたいと思うのです。

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