■2012年7月31日 第357号

第5週目のある月は増刊号!

 
■安定。そして、関係性

今回の『独り言拡大版』は、2012年6月15日に書いたブログの内容を転載することからはじめようと思います。


仕事をしていると、「どうしてやっているのか?」が曖昧になってしまう事が多い。

その“どうして”がすでになくなっているのに、やり続けられていたり、逆に、“どうして”が現存するのに、やるのをやめてしまっていたり・・・。

これを防ごうと、いろいろ社内では工夫がされるわけだけど、
100%の防止は難しい。

これは、私たちの仕事のことばかりではない。
社会でもそういうものはある。

この間、ある雑誌(何を読んだか忘却)を読んでいて驚いたのは、「商店街」。

「商店街」は、20世紀初頭の発明だった・・という社会学者の発言があった。

「商店街」は自然発生したもの・・・、言い方を変えれば闇市の延長ではなく、ちゃんと機能が計算されて発明されたものらしい。

しかし、1970年代後半から、その発明は、“どうして”を追いやられて、ぶち壊れていった・・。


私は、「商店街」というのは、小売業の人は自然発生的に集まってできたものだと思っていました。それも、闇市の延長くらいに考えていました。

ところが、それは大きな誤解だと知りました。
「商店街」は、自然発生的なものではなく、社会の安定のために、人為的に発明されたものだというのです。

私が読んだ記事には、「商店街」のような安定装置が発明されなかった東南アジアの都市では、大きなスラム街ができた・・とも書かれていました。

都市に流れ込んでくる離農者の安定的な受け皿として「商店街」が作られ、それが第二次世界大戦後に広がっていった。
しかし、転機が来ます。1973年のオイルショックです。

ここから、日本は、「安定」から「自由」の方向へ舵を切ります。時は、サッチャー、レーガンの新自由主義が世界を席巻していった時代です。
安定装置の「商店街」は時代遅れになり、郊外型の大型店舗との競争に敗れていきました。

今、東北地方では、震災後の再建設がはじまっています。
ひねくれ者の私は、被災地に行った人たちの「まだ、行っていないの?」的な態度に反感を覚え、いまだに現地には行っていません。したがって、現地の本当の状況は知りません。あくまでも、マスコミや知人からの情報しかありません。

しかし、ニュースなどで、被災地の商店街再興についての話を聞くと、再び、この「商店街」の機能が必要になっているな・・と感じます。

・・・というか、被災地に限らず、日本には、再び、安定装置としての「商店街」が必要になっている・・。
これは、老人の孤独死の問題や都内で起きている「商店街」の消滅の話などからも誰もが思いつくところだと思います。

同時に、楽天に代表されるインターネット上のモールに対する違和感も明解になります。

しかし、私たちは、「安定」のために払うべきコストを「自由」の名の下に支払拒絶をしました。「商店街」の衰退とは、大雑把に言ってしまえばそういうことでしょう。

佐渡のトキの保護には税金が投入されるけど、「商店街」という絶滅危惧種には、最早、何の価値もない・・という意思決定を日本人みんなで行ったわけです。

実は、私はこれからの時代のキーワードは、「安定」だと思っています。

こういう書き方をすると陳腐ですね(笑)。
ここら辺のことは、ライブで私の話を聞いていただいている方々には、非常に通じていると思うのですが、文章だけで伝えることには難しさを感じます。
でも、それを言っていても仕方がありません。ここは、陳腐に見える表現でも、そのまま言い続けるしかありません。

「安定」は、とても重要なキーワードです。

今起きていることは、ほとんど、この一言で説明がつくくらいの重要な言葉です。

そして、私たちの「安定」は、現在、国家から組織、家庭を含めて、あらゆる崩壊が起きています。

それは、人々が、「安定」に対してコストをかけるのを止めたことばかりではなく、「関係性」という重要な変数に瑕疵が起きていることから起きてきていると思っています。

私の息子(中3)は英語がまったくできないオバカです(ちなみに、他教科もひどいですけど、さらに輪をかけてひどいです)。
しかし、私は彼が英語ができないことを彼の能力の無さとは思っていません。
彼は、中学校の英語教師と良き「関係性」が作れなかったと考えています。

したがって、中学3年生になった息子に言いました。
「おまえ、この人は凄いな~、ついて行けるな~という人がいたら英語の成績は上がるか?」

息子は、即答しました。
「そりゃ、上がるなー」

息子の受験がどうなるかわかりませんが、彼は現在英語の成績が急上昇中です。
良き教師(塾)と出会い、彼を信じることにしたのです。

私のアドバイスは一つです。
「脇目を振らずに、ただ、その先生について行け」

こうして彼は「関係性」を構築し、「安定」を得ました。
後は、戦うだけです。

こんなエピソードで、少し「安定」ということについて、説明してみたんですけど、いかがでしょう?

巷間で流行る組織論の多くがずれているのも、ここら辺について概念さえないところにあると思っています。

逆を言えば、ここら辺について、20世紀初頭の日本人のように確信的であれば、日本の将来は明るいと思うし、私たちの組織の未来も明るいと思います。

この件については、文字では書ききれないので、繰り返し、このメルマで角度を変えて何かを書こうと思います。

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