■2014年8月19日 第466号

1.TAROの独り言
2.どうして、こんなに予言的?
・・・天動説
3.まーけ塾レポート
・・・(8)つながり過ぎ
4.Q&A
・・・ベネッセホールディングスの原田氏
5.しょせん人の言葉  しかし、気になる言葉
・・・『「マタイ伝」第25章』
6.砂漠の中から本を探す
・・・『街を変える小さな店』
7.TAROの迷い言

 
 

■天動説


リッチでないのに、リッチな世界などわかりません。
ハッピーでないのに、ハッピーな世界などえがけません。
「夢」がないのに、「夢」をうることなどは・・・とても。
嘘をついてもばれるものです。

(杉山 登志)


しかし、世の中は、その嘘が大手を振っている。世の中、嘘だらけである。
億万長者・・などと宣言しているけれど、そうじゃない人を数人知っているので、そんなことの方が普通で、気にもならなくなっていた。

また、逆に、本当なのに「嘘だ、嘘だ」とネット上で騒がれていることもあったりして、やっぱり、それも嘘が成立していたりする。

上記の言葉は、コピーライターの杉山さんが自殺する前に残した最後の言葉だそうだ。
優れたコピーライターだっただけに感受性が強く、広告の世界の嘘に耐えられなかったのかもしれない。

平気で嘘がつける・・というのは、現代社会では“能力”とされている。
そして、健康食品が世の中に氾濫することを代表に、嘘だらけの景色が私たちの目の前にある。これは言い過ぎではない。
いつからか、嘘をつくのは能力と理解されるようになったのだ。

嘘つきの全てがたくさん稼げるわけではないが、平気で嘘をつける方が稼ぎやすいのは事実であろうし、嘘はつかないにしても、口八丁手八丁の方がビジネスの世界で有利なのも事実だろう。
それは今にはじまったわけではなく、人間社会ではずっとそうだったのだ。

それでは、稼いでいる人は、みんな嘘つきだろうか・・・

もちろん、そんなことはない。
嘘なんてつかなくても、稼げるのだ。
これは、浮き輪をしなくても泳げる・・ということに近いと私は思っている。

ただし、浮き輪をしたら、誰が見ても「その人は泳げない」と理解するけれど、嘘つき浮き輪は、それが嘘だけにわからない人にはわからないという違いがある。誰が見ても「裸の王様」とわかるわけではないのだ。

残念ながら、当社のお客様にも、心の迷いから自から嘘つきを積極的に行ったり、嘘つきの仲間に入ってしまう人が時々いる(限りなく少ないと思っているが・・)。
この間も、ある人が私に一枚のチラシを見せた。
内容はさておき、私はその立派なチラシを見て「詐欺じゃないか」と言った。

ご本人はそのつもりはないから、気楽にチラシを私に見せるわけだが、そもそも「お気づきでない」というのは病である。
きっと、この事業に関わることもご本人は“能力”だと思っているのだ。

以前、ある講演会にゲストで呼ばれ、懇親会にも参加させてもらったところ、ある人が名刺交換に来て、
「やー、岡本さん、今日のあなたの話、来週の私のセミナーでつかわせてもらいますわーぁ」
と悪びれずに言った。

その人が、私の話のどこが気に入ったのかはわからないが、そのガハハな感じのキャラには、私のネタは全然合わないな~と心の中で思った。
そして、立川談志の“バカ”の定義が思い浮かんだ。
「バカとは、状況をよく見ないで処理する奴のことである」

この言葉を、次のように言い換えるといいと思う。
「バカとは、状況を自分の都合だけで見て処理する奴のことである」

つまり、嘘をつく前提にはこれがある。

“自己都合”

ある程度、人間は利口になると、地動説に変わる。
・・というか、地動説でないと生きていけないことを悟る。

私もあなたも、子供の頃は天動説だった。
“わたし”を中心に世界は回っていた。
しかし、つながる社会が広がれば、天動説の維持は不可能になる。
天動説ではどうにも要領を得ないことを経験しながら、私たちは地動説を受け入れざるを得なくなる。

嘘をつくというのは、天動説を維持するための方便だ。
地動説に気づきながらも、ごまかしごまかし天動説で生き抜こうという態度である。

そして、「私、別に泳げなくてもいいの。浮き輪で十分」という態度である。
こういう人は、上達とは無縁なのは言うまでもない。
浮き輪でプカプカ、パラダイスである。

杉山さんは先の言葉を残して自殺をした。
理由はわからない。
しかし、その言葉と関係していたと思えてならない。
嘘つきと市場の間に立たされたことと、自分の経験量と発する言葉の重みの差、この2つに耐えられなくなったのだと思う。

天動説だった子供の頃、私たちは多くの嘘をついてきた。たくさんの背伸びをしてきた。もしそのままだったら、今の私たちはない。
もちろん、今も同様ならば、将来の“わたし”はない。
子供から大人になるまでに使えたごまかしは、老年にむかっていく旅先では使えない。

もちろん、社会も同様だ。
そのうち嘘つきは相手にされなくなる。
テレビも雑誌も同様だ。
いつまでも嘘つきの代表的な媒体であってはならない。
実は、インターネットとの差別化なんて簡単にできるのだ。

同様に、私たちがビジネスで差別化を行っていくことはそれほど難しいことではないはずだ。

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