2015年6月16日 第510号

目 次
  1. TAROの独り言
  2. どうして、こんなに予言的?
    ・・・イニシエーション再考
  3. まーけ塾レポート
    ・・・6.磁気テープ急伸
  4. Q&A
    ・・・やる気を出してもらうには
  5. しょせん人の言葉  しかし、気になる言葉
    ・・・『ジョーン・ロビンソン』 
  6. 砂漠の中から本を探す
    ・・・『弱いつながり』
  7. 構造で映画を見る。時々、いいかげんに映画を見る。
    ・・・『がむしゃら』
  8. TAROの迷い言
2. どうして、こんなに予言的?

■イニシエーション再考

「生まれ変わる」ということを、
私は人間の根本条件としております。

(亀井勝一郎)

昨年の『年末放談』でも紹介しましたが、
気学では今年は【震宮】です。
気学的には、前年に続いて風が吹く2年目であり、
新規計画実行の年とされています。

同時に、顕現作用が働くので、
吉凶が表面化しやすい年とされています。
いろいろと自分の化けの皮が剥がれるという年ですね・・。
昨年の『VIPミーティング』あたりから“ランダム・アクセス”を
心がけることをしつこく言っていますが、“ランダム・アクセス”には相応しい年とも言えます。 

上の亀井勝一郎の言葉のように、人間が人間としているためには、
一つの人生の中で、何度か生まれ変わらなければなりません。
ですから、人類社会には昔からイニシエーションが用意されて
います。

現代人の私たちにわかりやすいイニシエーションと言えば、
歴史時代劇などに出てくる元服でしょう。
子供から大人になる儀式と同時に名前が変わる。
この重要な仮定をアニメで描いたのは、
『千と千尋の神隠し』でした。

現在の日本では、七五三、結婚式、葬式くらいしかイニシエーションは残っていませんが、アボリジニなどの社会では、
多くのイニシエーションが残っています。
特に、アボリジニのイニシエーションの一つに、
死を体験するというイニシエーションがあります。
そのイニシエーションを通して、アボリジニがどれだけ死の恐怖を
持たないで生きているかはわかりませんが、私たち現代人よりも死を疎まないで生きていると思います。

アボリジニの死のイニシエーションや元服の例を見ればわかるように、イニシエーションとは、【破たん】の演出です。
儀式という安全な場所で、【破たん】を体験することで、
存在の力を増そうとする人間の知恵です。

現代社会には、ママゴトのようなイニシエーションしかありません。さらに、そのママゴトさえも避けようとしたり、簡単にしようという社会です。 
ですから、私たちは意識的に【破たん】を体験する必要があります。

私は、そうした場として一年に一回の『特別セミナー』を用意しました。
個人的には、最もやりたくないセミナーですが、
“生まれ変わる”ということを人間の根本条件とした時、
それは避けられないと考え、いやいやながら続けています。

昨年封切られた映画『6才のボクが、大人になるまで。』は、
6才の子供が18才になるまでを描いた映画で、実際に役者たちを
12年間撮影し続けて人生の中の瞬間を描きました。

パスカルの言葉に次のものがあります。
「子供は人間ではない」

なぜならば、
「理性が誕生して、そうした理性によって人がゆり動かされはじめたときからしか(人の生を)数えたくない」からだそうです。
つまり、『6才のボクが、大人になるまで。』は、
一人の“人”が生まれる過程を撮った映画と言えるでしょう。
そして、同時に、主人公の周りの大人達のイニシエーションの物語でもありました。

昨年、当社のお客さまに、結構神経をすり減らすクレーマーが現れました。
そして、お客さまが相談のために私に書いたレポートを読むと、
そのクレーマーが成熟していないただの子供であることが十二分に
伝わってきました。
年齢は40代くらいの人だと思われますが、今日の今日まで、
子供のまま過ごしてきたのです。

現代社会では、子供のままでいるのは容易です。
目の前の現実から逃走を続ければいい。それだけです。
嫌なイニシエーションが用意されていない社会ですから、
それは簡単なことです。 

我が家の子どもたちは、“ザク”という名前を会話の中でよく使っています。
ご存知のように、“ザク”とは『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツ(=ロボット)の一つです。
彼らの会話を聞いていて、不思議に思った私が
「“ザク”ってなんだ?」と聞くと、
「量産型」の意味だと答えました。
“ザク”というモビルスーツは、ショッカーの戦闘員のような位置づけで、その他大勢的な武器なのです。

大量消費社会の中で、何も考えることなく無批判に消費する人のことを彼らは“ザク”と呼んでいたのです。
我が子ながら、ずいぶん曲がって育ってしまったなーと思いつつ
笑ってしまいました。

そして、彼らは、消費社会の中で、
どうやって“シャア専用ザク”になるかを模索しているようです。 
彼らの「“シャア専用”になりたい・・」という吐露には、彼らなりの消費社会での生き方の難しさの実感があるように思います。
彼らの目の前には、大きな壁があるのです。

おそらく、先ほど例に上げたクレーマーには壁はありません。
目の前に現れる壁は、文句の対象でしかなく、
何もかも壁が悪いのです。
ですから、自分は変わろうとせずに、
立ち現れる壁に文句を言い続けてきました。
そして、子供のままの今がある。
パスカルに言わせると、人ではないのです。
そして、うちの子どもたちに言わせると“ザク”なのです。 

【破たん】とは、自分の化けの皮が剥がれることを意味します。
・・というか、自分自身がそれに気づくことを意味します。

先ほどのクレーマーも、いつも自分の化けの皮が剥がれていて、
それを周囲は見て呆れているわけですが、本人が、化けの皮に気づくことはありません。
実は、化けの皮は、周りにはいつもわかっていることです。
確かに、“ザク”にはわかりづらいことですが、
ある程度成熟した人物には手に取るようにわかります。
しかし、自分には、化けの皮はわかりません。
だから、人には、化けの皮を剥いでくれる人が必要です。
人は、精神的に負け続ける必要があるのです。  

さて、どうしてこんなことを改めて書いているかということを
確認すると、冒頭に書いたように今年が【震宮】だからです。
気学をどこまで信じているのか?と問われると微妙なのですが、毎年年末に翌年の定位を確認していると、不思議と当てはまるのです。
もちろん、それは、当てはまるエピソードを抜粋してきて、
当てはめている人間の癖であることは承知しています。
しかし、それは利用ができます。

つまり、せっかく昔の人が9年周期の行動指針を示してくれているのだから、それに乗かって行動するのは悪くないと思っているのです。
そうすると、【震宮】とは、
[顕現作用が働くので、吉凶が表面化しやすい年とされています。いろいろと自分の化けの皮が剥がれるという年]ということですから、これを利用するのは、いかが?と提案したいわけです。 
自己啓発セミナーみたいに、
「変われるチャンスです!」と言いたいわけです(笑)。

再度、亀井勝一郎の引用をしておきましょう。
「人間として“生まれる”ということは、“生まれ変わる”ということです」

生まれ変わらない頑なな奴は、人間ではないのです。

私たちは、いつも人間として生きるか、
単なる受動的生物として生きるかが問われています。
しかし同時に、弱いですから、どうしても受動的になりがちです。
ですから、【震宮】の年くらい意識的になってみたらと思うのです。

今年も、半年経ってしまいましたが、まだ半年あります。
ぜひとも、【破たん】を楽しんで下さい。

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