■戦略的諦念
「resignation」
英語のことはよくわかないが、ツマラナイなーと思う。
この単語を電子辞書で調べると、
「辞職、辞任、辞表、あきらめ、忍従、観念」なのだ。
まー、仕方がないのかもしれない。
アメリカ人の金科玉条のマントラは
「諦めるな!」
なのだから・・・・・。
私が、どうして「resignation」という単語に行き着いたかというと逆引きからだ。
「諦念」という言葉を電子辞書に入力すると「surrender」または「resignation」と出た。「surrender」はさらに遠いような言葉なので、これ以上は触れない。
欧米人には、「諦念」の概念がないのか・・?
と一瞬思ったが、そんなわけはない。
最低でもキェルケゴールがいる。
デンマーク人の彼がどのような単語を使っているかはわからないが、海外にも何らかのニュアンスはあるのだと思う。
ところで、改めて「諦念」について考えたい。
私は、元々「自己実現とは諦念の中にある」と思っている人なので、この言葉を非常に前向きに使ってきたのだが、アメリカのつまらないマントラに侵されてしまった現代では、この言葉を前向きに捉える人は少ないと思う。
以前、少し「諦念」に触れた時には、思春期の男の子が失恋を通して「諦念」を知ることや、その「諦念」の積み重ねが人をつくる・・・ということを書いた。
「諦念」こそが人をつくる。
そこに、深い深い自己実現の種がある。
アメリカのマントラは冗談なのである。
以前にも書いたが、今年6月『VIPミーティング』用に、 国税庁や厚生省、総務省などの公開資料を元にいろいろなデータを 作成した。
このデータは、私にはかなり衝撃だった。
どれもわかっていたことではあったが、漠然とわかっているのと、 具体的にわかるのでは、まったく違う。
お先真っ暗な我が国の経済の単なる理解にとどまらず、 これからの生き方を突きつけられたようなその内容を見て、 私が最初に浮かんだ言葉も「諦念」だった。
もう少し詳しく書けば、「戦略的諦念」とでも表現するのが相応しいと思う。
そして、同時に、それは私個人が今まで進んでおこなってきたことでもあり、逆に私が失敗をやらかす時は、だいたいこの言葉を忘れた時であることがわかっている。
「戦略的諦念」をもう少し簡単な言葉で表現してしまうならば、 それは極当たり前のことになる。
「これをやるくらいなら、やらないほうがマシという感覚」
私が過去に使ってきた別の言葉を使えば、
「美観」
という言葉になるだろう。
ちょっと個人的な話を・・・。
私は2000年以降、いつも諦めてきた。
いろいろできることはあった。
しかし、リソースが足りなくて諦めたものがたくさんある。
ただし、それだけではない。
十分できることもあったけれど、どこかで「これをやるくらいなら、やらないほうがマシという感覚」が襲ってきて、あえてやらないことの方が多かったと思う。
例えば、インターネット広告もやめた。
当社のインターネット広告を見たことがある人なんて、 何人もいないはずである。
税理士事務所の東京進出も遅くなった。
もっと早く進出していれば、もっともっと大きくなっていたのは 間違いないと思うが、焦って進出しなくて良かったと心の底から 思っている。
ただし、21世紀に入ってからの時代の雰囲気はいつも浮ついた 感じがあって、私も時々その浮ついた感じに足を絡めとられそうに なったときはある。
しかし我慢した。
最後は、 「これをやるくらいなら、やらないほうがマシという感覚」である。
そして、その我慢は正解だったと今は思っている。
さて、そんな私の個人的経験をもっともっと誰もが経験することに なるのが、これからである。
市場はどんどん小さくなる。
それも最も消費する層を中心に小さくなっていく。
すでに、この国は年収300万円以下の人たちが40%を超えているが、まだまだこれからだと思う。
まずは、この40%を超えた人たち、そしてこれからもっと増える人たちを無視することから、私たちははじめなくてはならない。
この人たちがどう動こうが私たちには関係ない・・・と決める。
「この人たちにモノを売るくらいなら、売らないほうがマシという感覚」である(ちょっと言い過ぎな感じになってしまいますが、趣旨をご理解ください。すみません)。
こういう感覚で、私たちは日本の65%くらいの人たちを無視することになる(65%というのはだいたい年収500万円以下の人たちになります)。
中小企業なので許してね!という謙虚な気持ちを持って、 65%の人たちと別れをつげる。
しかし、まだまだ。
これでは「戦略的諦念」ではない。
残りの35%もまだお客ではない。
さらにさらに無視する人たちを選ぶ。
ただし、その選択は企業ごとに違ってくるので詳しくは書けない。
ご容赦を。
ここの選択は、 「これをやるくらいなら、やらないほうがマシという感覚」が 重要になる。
まずは、トコトンやらないことを決めよう。
そして、その殻から出ないことだ。
そんな後ろ向きな方法が、幸運をもたらす時代になった。
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