2017年3月7日 第604号

目 次
  1. TAROの独り言
  2. 理想はハイジのおじいさん
    ・・・マインドフルネス
  3. まーけ塾レポート
    ・・・2. 80歳まで仕事・・なのかよ
  4. Q&A
    ・・・優先順位の一番は、自分の成長だ。について
  5. しょせん人の言葉  しかし、気になる言葉
    ・・・『ピーター・ブラベック・レッツマット【ネスレ会長】 
  6. 砂漠の中から本を探す
    ・・・『立地の科学』
  7. 構造で映画を見る。時々、いいかげんに映画を見る。
    ・・・『パリ、恋人たちの影』
  8. TAROの迷い言
  9. プレゼントコーナー
2. 理想はハイジのおじいさん

マインドフルネス


『マインドフルネス』が流行っている。
なんだか、またか・・・という感じがして、
とても違和感があるので、少し書いてみようと思う。

7年ほど前から『マインドフルネス』という言葉を頻繁に聞くようになったが、その言葉の起源は古い。
19世紀の後半、イギリスの仏教学者T・W・リス・デイヴィッズが、パーリ語の“sati”を翻訳したのが最初と言われている。

“sati”をWikipediaで調べると
「特定の物事を心に(常に)留めておくこと」とある。
仏教用語としての“念”という言葉は、ここからきているらしい。

“念”は、「今の心」。「いまここ」である。

この『マインドフルネス』が行動療法の一つとして心理療法に導入
されたことが、今回の流行のきっかけだ。
アメリカでは、総人口の約8%が実行しているという。

ところで、私の違和感である。
この違和感は、90年代に起きた瞑想ブームの時にもあった。
瞑想は次のように推奨された。
「瞑想をすれば、ビジネスや人間関係がうまくいく」
瞑想は、万能の処方箋のようなものに成り上がり、
その後、人々の期待を上手に裏切り、夢中になった人たちの興味から消えていった。
もちろん、今でも正統的な精神で続けている人もいるかもしれないが、そういう人は例外と言い切っていいだろう。

今回の“現世利益”は治療である。
そして、治療からはじまって、
再び、思考が自己実現に向かいはじめている。

鎌倉(治療)から上陸したゴジラは、軽々と多摩川を越え、
目黒区まで到達。現在、破壊を継続中である。

『マインドフルネス』の生みの親である仏教思想は、
「われわれの心身は意思によってコントロールできない」と言う。

『マインドフルネス』の実践により、ストレスの軽減を筆頭に
“現世利益”はある。
しかし、それはたまたまの結果だ。

私も、心理的な障害に対して、『マインドフルネス』的アプローチを使っている一人ではあるが、“治す手法”としての興味は持っていないし、そんなことを前提に利用はしていない。世の中も、人間の身体も複雑で、単純な一手法で、何から何まで実現することなんてない・・という常識をそれなりにわかっているつもりだからである。

90年代の瞑想ブーム同様に、今回も奴はアメリカからやってきた。
大量の放射能を体に溜め込んでの上陸は、前回と変わらない。
1954年にファースト・ゴジラが上陸してから数年後、
アメリカから最悪のセミナー(自己啓発セミナー)が上陸。
そのまま居座ると同時に、新たな上陸も許してきた。

昔から、日本人はアメリカからの上陸に弱い。
さらに、逆輸入にはもっと弱い。
『マインドフルネス』も、『ポケモンGO』同様にそもそも逆輸入である。

ところで、『マインドフルネス』は、“バラ売り”である。
ゴジラは単品だったのに、その後『モスラ対ゴジラ』『怪獣大戦争』を筆頭にバンドリングされていく。
そして、最後には、息子までセット売り。
一緒にシェーまでやってしまった。

逆に、『マインドフルネス』は仏教思想の体系の一つで、
本来単品ものではない。
私が今、この文章を書いているそもそもの理由がそこにある。
いろいろ文句を言っているが、
「“バラ売り”やめろー!!」と言いたいのである。

まー、しかし・・。
私の「”バラ売り”やめろー!!」な気分をせせら笑い、
脱仏教化という看板を立てて前進するのだから、
腹立ちはおさまらない。

『マインドフルネス』は、脱仏教化に成功し、
洗練された消費物と相成った。
普段なら買わないであろうものを、看板を変えてしまって売りさばくというのは、戦後の消費社会のお馴染みの景色。

そして、“バラ売り”されている『マインドフルネス』は、
逆にバンドリングの道を歩みはじめる。
セミナー、テキスト、CD、座布団、鐘、ろうそく・・・などはまだかわいい。

調子に乗って、食品や美容品などがバンドリングされている例も出てきているようだ。
多摩川防衛線を軽く超えたゴジラは、すでに東京駅の前まで来ているのかもしれない。

イギリスでは、最近、トレーナーがセミナー中に起こることに対応できず、むしろ心の病気を悪化させていることが問題になっている。
東京駅まで来てしまっているゴジラが、イギリスと同じような事態を引き起こすのも時間の問題・・・というか、きっとすでに起きていると思う。
こういう商品に金好きの素人が群がり、適当にセミナーをはじめる・・という図は毎回繰り返されていることだ。

『マインドフルネス』の次が何になるかはわからないけど、
魑魅魍魎の“バラ売り”は続くだろう。
「普段なら買わないであろうものを、買わせる・・」というのは、
消費者社会のラストリゾートである。

・・・と、ここまで書いて思い出した。
『マインドフルネス』的な手法を続けているうちに、
精神に違和感が生じるようになったという人が当社の個別相談に
来られたことがある。

私は、ボタンの掛け違いを解説しつつ、
対応策を伝授させていただいた。
きっと、こうしたことで悩んでいる人はすでに多くなっているのかもしれない。

どんな情報でも手に入る世の中で、皮肉なことが起きている。
物事は、体系的に学び、体系的に使わなくてはならない。
“いいとこ取り”は、必ずツケを払わされるようになっている。

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