■ 夢 ー再考ー
新年に、お客さまへの挨拶回りをした時のことでした。
どこに行っても、とても懐かしい景色。
どうも私は地元の新潟では、ほとんどクルマに乗ることがなかった ようです。
考えてみると、家と事務所を往復するだけ。買い物なんてすることもありませんから、そんなものなのでしょう。
そして、多くの場所、10年以上ぶりの景色。中には、 20年ぶり・・・なんて場所もありました。
「人の行動は、その時、その時でパターン化しているのだなー」
と強く感じました。
東京に居てもそれは同じ。さまよっている場所はいつも一緒です。
人間なんて、そんなものです。
そして、その“さまよい”もしっかり意図をもったものではありませんから、新しい建物ができたりすると、 「前は、ここに何があったっけ?」と思うものの、 まったく思い出すことができないということが起きます。
実に、毎日なんとなくパターンを繰り返している・・というわけ です。
そんな生き物が、10年以上ぶりに、パターンからズレた行動をしたわけです。
そして、それはなかなか刺激的でした。
もしかしたら、海外旅行よりも面白いかもしれません。
そんな浦島太郎的なオカモトが見た、久しぶりの地元の景色の感想を一言で言うと、
「トコトン壊れている」
もうびっくりするくらいに、景色が壊れてしまっているのです。
その時の気持ちは、1月10日のブログに「街が壊れていく」というタイトルで書きました。
地方の景色が壊れてしまった理由は、ブログにも書いたように 「センスの悪い経営者たち」にあるのですが、 そんなセンスの悪いことが起きてしまった要因には、 「調整区域の解除(線引の解除)」があります。
都市計画法における開発制限の“要”が、行政によって積極的に白紙に戻されてきたのが、ここ数十年の地方の景色です。
商業集積や、人口増だけを目論んで行われた調整区域の解除。
そのために、何の計画性もないセンスの悪い建物群が、 田園風景の中に屹立することとなりました。
そして、1990年代に一挙に建てられた建物は、 事業戦略の甘さから廃虚に近い状態になって、今があります。
それに伴う行政コストも大変です。
「スポンジ化現象」と言うらしいですが、地方で大々的に造成された開発地は、事業の失敗や住民の移転により、どんどん歯抜けになっているそうです。
しかし、歯抜けになっても、その開発地にかかる行政コストに変わりはありません。いや、むしろ歯抜け状況の方が、コストがかかっている可能性すらあります。
「夢の果て」
多くの地方で見られる景色には、 このネーミングが相応しいと思います。
しかし、人の行いなんて、みんな「夢の果て」なのかもしれません。
私は今年の2月に事業の一部を手放しました。
そのことについて、私は事前の対策をうまく取ったと思っています。
最善を尽くしました。
そして、とてもうまく着地させたとも思っています。
しかし、この事業。もっと面白い展開は可能だったと、 今も思っています。
残念ながら、経営者である私の力不足で、 良い人材に恵まれませんでした。
あと一歩というところまで来ていましたが、 最後の一歩が踏み切れませんでした。
この事業は、足踏み状態のまま継続は可能でした。
十分なキャッシュ・フローも生んでいました。
でも、どんなにキャッシュ・フローを生もうとも、 当初見た“夢”とは違う姿になってしまった事業を そのまま継続する情熱は、私にはありませんでした。
私の目の前にあったものは「夢の果て」だったのです。
ところで、「夢の果て」の処理は思ったよりも大変でした。
センスの悪い建物はありませんが、その器の中で働き、 生活している人がいます。
それに、ずっとお付き合いいただいているお客さまもいらっしゃい ます。
スタッフとお客さまを限りなく傷つけずに、うまく着地させ、経営者が変わってもスムーズに運営させようとするのは大変なことです。
実は、私が、今年に入って、大量のお客さまへの挨拶回りをこなしたのも、それが理由です。
あるスタッフからは 「私たちが考えていた以上に社長が動き回ってくれたので・・・」 という言葉をもらいましたが、それは当然のことです。
私は夢が嫌いです。
人間ですから、もちろん夢は見ますが、好きではありません。
個人の夢が個人の夢の範囲にとどまるならば「勝手にどーぞ」 ですが、夢は必ず人を巻き込みます。
もちろん、人をどんなに巻き込もうと、その夢が素敵で、 最後まで輝き続けるのであれば、それは称賛すべきでしょう。
しかし、それは絶対にありません。
「果て」はあるのです。
そして、あちこちが「果て」の景色です。
それを有識者は、なぜに指摘しないのか・・?
今、私たちは「果て」の回収に迫られている状況にあります。
そんなことを考えて仕事をするのは「夢」がありませんが(笑)、 実はそれこそが素敵な仕事なのだと思います。
ツマラナイ上昇志向は、迷惑なだけです。
私も、その禁を少し犯してしまいました。
そして、今も、少しだけですが犯しているのだと思います。
今回の件で、別れることとなった数名のスタッフには、 新天地でも頑張ってもらいたいと思います。
最善。
私たちにはそれしかありません。
今回の邂逅でも、それを再認識させられました。
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