2017年4月25日 第611号

目 次
  1. TAROの独り言
  2. TAROくんの独り言拡大版
    ・・・夢 ー再考ー
  3. まーけ塾レポート
    ・・・8. ヤマダの誤算
  4. Q&A
    ・・・お好きな漫画は?
  5. しょせん人の言葉  しかし、気になる言葉
    ・・・『マット・タイビ
  6. 砂漠の中から本を探す
    ・・・『日本近現代史入門』
  7. 構造で映画を見る。時々、いいかげんに映画を見る。
    ・・・『たかが世界の終わり』
  8. TAROの迷い言
2. TAROくんの独り言拡大版

■ 夢 ー再考ー

新年に、お客さまへの挨拶回りをした時のことでした。
どこに行っても、とても懐かしい景色。
どうも私は地元の新潟では、ほとんどクルマに乗ることがなかった
ようです。

考えてみると、家と事務所を往復するだけ。買い物なんてすることもありませんから、そんなものなのでしょう。
そして、多くの場所、10年以上ぶりの景色。中には、
20年ぶり・・・なんて場所もありました。

「人の行動は、その時、その時でパターン化しているのだなー」
と強く感じました。

東京に居てもそれは同じ。さまよっている場所はいつも一緒です。
人間なんて、そんなものです。
そして、その“さまよい”もしっかり意図をもったものではありませんから、新しい建物ができたりすると、
「前は、ここに何があったっけ?」と思うものの、
まったく思い出すことができないということが起きます。

実に、毎日なんとなくパターンを繰り返している・・というわけ
です。

そんな生き物が、10年以上ぶりに、パターンからズレた行動をしたわけです。
そして、それはなかなか刺激的でした。
もしかしたら、海外旅行よりも面白いかもしれません。

そんな浦島太郎的なオカモトが見た、久しぶりの地元の景色の感想を一言で言うと、

「トコトン壊れている」

もうびっくりするくらいに、景色が壊れてしまっているのです。

その時の気持ちは、1月10日のブログに「街が壊れていく」というタイトルで書きました。

地方の景色が壊れてしまった理由は、ブログにも書いたように
「センスの悪い経営者たち」にあるのですが、
そんなセンスの悪いことが起きてしまった要因には、
「調整区域の解除(線引の解除)」があります。

都市計画法における開発制限の“要”が、行政によって積極的に白紙に戻されてきたのが、ここ数十年の地方の景色です。

商業集積や、人口増だけを目論んで行われた調整区域の解除。
そのために、何の計画性もないセンスの悪い建物群が、
田園風景の中に屹立することとなりました。
そして、1990年代に一挙に建てられた建物は、
事業戦略の甘さから廃虚に近い状態になって、今があります。

それに伴う行政コストも大変です。
「スポンジ化現象」と言うらしいですが、地方で大々的に造成された開発地は、事業の失敗や住民の移転により、どんどん歯抜けになっているそうです。
しかし、歯抜けになっても、その開発地にかかる行政コストに変わりはありません。いや、むしろ歯抜け状況の方が、コストがかかっている可能性すらあります。

「夢の果て」

多くの地方で見られる景色には、
このネーミングが相応しいと思います。

しかし、人の行いなんて、みんな「夢の果て」なのかもしれません。

私は今年の2月に事業の一部を手放しました。
そのことについて、私は事前の対策をうまく取ったと思っています。
最善を尽くしました。
そして、とてもうまく着地させたとも思っています。

しかし、この事業。もっと面白い展開は可能だったと、
今も思っています。
残念ながら、経営者である私の力不足で、
良い人材に恵まれませんでした。
あと一歩というところまで来ていましたが、
最後の一歩が踏み切れませんでした。

この事業は、足踏み状態のまま継続は可能でした。
十分なキャッシュ・フローも生んでいました。

でも、どんなにキャッシュ・フローを生もうとも、
当初見た“夢”とは違う姿になってしまった事業を
そのまま継続する情熱は、私にはありませんでした。
私の目の前にあったものは「夢の果て」だったのです。

ところで、「夢の果て」の処理は思ったよりも大変でした。
センスの悪い建物はありませんが、その器の中で働き、
生活している人がいます。
それに、ずっとお付き合いいただいているお客さまもいらっしゃい
ます。

スタッフとお客さまを限りなく傷つけずに、うまく着地させ、経営者が変わってもスムーズに運営させようとするのは大変なことです。

実は、私が、今年に入って、大量のお客さまへの挨拶回りをこなしたのも、それが理由です。
あるスタッフからは
「私たちが考えていた以上に社長が動き回ってくれたので・・・」
という言葉をもらいましたが、それは当然のことです。

私は夢が嫌いです。
人間ですから、もちろん夢は見ますが、好きではありません。
個人の夢が個人の夢の範囲にとどまるならば「勝手にどーぞ」
ですが、夢は必ず人を巻き込みます。

もちろん、人をどんなに巻き込もうと、その夢が素敵で、
最後まで輝き続けるのであれば、それは称賛すべきでしょう。

しかし、それは絶対にありません。

「果て」はあるのです。

そして、あちこちが「果て」の景色です。
それを有識者は、なぜに指摘しないのか・・?

今、私たちは「果て」の回収に迫られている状況にあります。

そんなことを考えて仕事をするのは「夢」がありませんが(笑)、
実はそれこそが素敵な仕事なのだと思います。

ツマラナイ上昇志向は、迷惑なだけです。
私も、その禁を少し犯してしまいました。
そして、今も、少しだけですが犯しているのだと思います。

今回の件で、別れることとなった数名のスタッフには、
新天地でも頑張ってもらいたいと思います。

最善。
私たちにはそれしかありません。

今回の邂逅でも、それを再認識させられました。

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