2017年8月29日 第629号【第5週目 増刊号】  

1. TAROくんの独り言拡大版

■方向

世界最初の旅客列車の時速は12.8キロだったそうです。
現代から見ると、おもちゃみたいな速さですね。

当時は、「空気抵抗があるので80キロは突破できない」とか、
「80キロのスピードを出したら巨大な竜巻が起こる」とか言われていたようです。
160キロを超えると車内は真空になって、乗客は全員窒息死すると
予言した科学者もいたそうな・・・。
私は、月に何回も新幹線で地元と東京を往復していますが、
新幹線の座席で飲むコーヒーは格別です。
昔の科学者が見たらびっくりですね。

歴史上の学者の消極的な態度に対して、最近の学者は積極的です。

最近の学者の発言は、マーケティングを兼ねています。
夢のぶち上げ方次第で、お金の集まり方が違いますから
仕方がないですね。

学者ではありませんが、イーロン・マスクの夢のぶち上げ方などは、その典型でしょう。
・月旅行
・惑星間移動
・火星移住
・テレパシー    ・・・・

こうした彼の大言壮語で、大きな金額が動きます。
彼が経営する会社の一つ、テスラモーターズの株価がGMの時価総額を超えたのも、夢の価値がかなり入っているからでしょう。

彼は、ここまで夢を実現してきました。
ロケットはかなりの確率で落ちていますが、
未来の交通システム「ハイパーループ」の実現も加速していると
言われています。
本当に、時速1,220キロの高速鉄道ができるのかわかりませんが、
昔の学者の後ろ向きとは大違いです。

予測は外れます。
それもかなりの確率で・・・。
だから、過去、多くの予測が討ち死にしてきました。
しかし、その過去の予測を見直してみると、
方向は間違っていないことが多かったように思えます。

ですから、実現の形は、今の予測とは全然違うものになるとしても、イーロン・マスクの夢の方向性は、実現していくのかもしれません。

ただし、くどいですが、企業家や学者の夢、予測、計画、発見・・・には、資金集めという目的が伴いますから、過去の方向性を当ててきた予測とは、一本、線を引いておいた方がいいでしょう。

実際、イーロン・マスクの夢は、イギリスの南海会社やジョン・ローのミシシッピ計画に近い・・・・・・とも言えます。

結局、何が起こるかなんて、
当事者の私たちには絶対にわかりません。
“今までこうだったから、こうなる…”という人間の過去の理解さえも飲み込んで、コトは起きますから、ただ変化に流されていくしかないのでしょう。

歴史から学べることは多いですが、歴史の理解も将来の予測の前ではほぼ無力です。
デリダが言うところの「手紙は届いてはじめて手紙になる」ですね。
歴史は、すべて“届いた手紙”です。それに対して、私たちは大量の
“届かない手紙”の中で戸惑っています。

トインビーを代表に、歴史学者は”届いた手紙”を元に、荒唐無稽な
“物語”を語ったりする場合もあります。
届いちゃえば、何でもアリですよね。

日本海側だけなのか、日本全国で行われているのか分かりませんが、この間、北朝鮮のミサイル攻撃を想定した訓練のようなものがありました。
会社で仕事をしていると、
「ミサイルが飛んできたので、避難してください」
という市の緊急放送が流れてきたのです。

「あー、今って、そういう状況なのねー」と思いながら、
放送の内容と全然関係ないことをしている自分とのギャップがとても不思議でした。東北の震災が起こる1分前の人々も私と同じような
ものだったと思います。

歴史好きならば、今の北朝鮮の行動とアメリカの反応で、
第二次世界大戦前のドイツを思い出すことと思います。
当時、ヒトラーはイギリスの出方を見ながら、野望を遂行していきました。
オバマの政策は、当時のチェンバレンの宥和政策を思い出させるものがあります。トランプが、チャーチルになるかどうかはわかりませんが、当時のヨーロッパのような空気の中で、空襲に備えた放送が訓練といえども流れちゃったんです。

歴史は語れますが、手紙は届くかどうかはわかりません。

私たちは、届かない手紙を前にして、あーでもない、こーでもないと余計なことを考えてみたり、学者や経営者の夢にノセられてみたり
しているというわけです。

アメリカは再び月を目指すことにしました。
しかし、どこまでできるのでしょうか?
私が疑問に思うのは、技術の問題ではありません。お金の問題です。

イギリスの時速12.8キロの旅客列車が、どんどん速くなっていったのは、植民地の犠牲と乗数効果があってのものです。
過去のアメリカが月に行けたのも、当時の経済は乗数効果を最大限に享受していた時代だったからでしょう。

イーロン・マスクは、乗数効果を高めようと必死です。
そして、彼が放った乗数効果という夢は、投資家を集めています。
それに対して、大国家アメリカには、それがありません。
地球上に金はいくらでもあるけれど、国は貧乏で、
いわゆる経済の成功者に代表される個人に金は集まり、
それを夢が強引に吸収しようとしています。

金を動かした夢は、世界を変えるのかどうか?
ソビエトは金で行き詰まりましたが、北朝鮮はどうなるのか?

いずれにしても、金の向かう方向が未来です。

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