2017年10月31日 第638号【第5週目 増刊号】  

1. TAROくんの独り言拡大版

■西表島で、サニーゴを捕りました

「西表島で、サニーゴを捕りました」という日本語。
通じる人はどれくらいいるでしょうか?

日本語ではありますが、“サニーゴ”がわからないと、
まったく何かわからない・・・。当然そのはずです。
さらに、西表島を“にしおもてじま”と読む人もいるかもしれません。
多くの読める人たちだって、行ったことがある人は限られていますから、その正確な場所まできちんと知っているかは疑問です。

短い文章です。日本語です。
でも、単語の意味がわからないと何もわからない。
この事実は、結構深刻な話ではないでしょうか。

そういえば、我が家の娘たちは、
斎藤道三のことを知りませんでした。
信じられないことですが、
「習っていないもん!」と言われておしまいです。
知らない側にしてみればそんなものでしょう。

ちなみに、娘たちの高校時代の歴史の成績は悪くなかったと記憶しています。
極端に歴史が嫌い・・・というわけでもない、普通の若者なのです。
でも、織田信長や明智光秀の話を一緒にしようとすると、
決定的なナニカが足りなくなります。実に会話は成立しないのです。

私は、このこと(とても当たり前のことでしかないのですが・・・)を英語の学習を通じて知りました。
「わからん、わからん!」と言っているけど、要は、単語とその発音を知らないというケースがほとんどで、それはとてもとても根が深い問題です。

ところで、当社は常連の方々の占有率がとても高い会社です。
あまり良い例ではありませんが、都内の超人気飲食店にちょっと似ています。

都内の超人飲食気店は、常連が次の予約をして帰っていくのが通常です。ですから、新規客が予約をしようと思っても大きな壁が立ちはだかります。
もちろん、当社にはそんな大きな壁はないつもりです。
しかし、『Dファクトリー』を筆頭に、希望すればすぐに参加できる・・・ということが絶対的に不可能なものがあるのは事実です。

さしずめ、この『週刊 岡本吏郎』や『ニュースレター』などは、
飲食店におけるテイクアウトの弁当だったり、惣菜のような位置づけになっちゃっているのかもしれません(笑)。

別に自慢話がしたいわけでも、常連以外お断りと言いたいわけでも
ありません。京都のお茶屋ではありませんから、いつでも門戸を
開いているつもりです。

しかし、どんなに門戸を開いているつもりでも、
独自の言葉が大量にあり、その言葉は外では通じません。
どれも普通の言葉です。ビジネスで普通に語られている言葉です。
でも、まったく通じない。そんなことがよく起きています。

ですから、私はよく困っています。
時々来られる新しい方々と会話をするのが、とても難しいと
感じています。
「経営計画」のような普通に使われる言葉。
そうした言葉を中心に話のやり取りをしていても、そこに遠い距離を感じてしまいます。むしろ、全然知らない言葉のほうがマシな可能性さえあります。

同時に、相手の心の在り処についても考えます。
・・・というか、言葉とは、発する人の心の在り処の表現だと思うのです。

「経営計画」という一つの言葉ごときでも、そこには、発し手の心が宿ります。
そして、ビジネス絡みで“熟語”が使われる時、そこに「魔法願望」に近い“心のたたずまい”が見えてしまうことがよくあります。

だから、あらゆる経営用語を否定できないか、ないしは新しい言葉を造語できないか・・・という考えをいつも持っています。
“サニーゴ”という言葉が発せられても、そこには“心のたたずまい”は表れません。造語であり、キャラクターの固有名詞だからです。
そこには、何の推測もありません。

初心者の英語は、推測です。
キャッチした言葉から推測をし、相手の語りたいことを何となく把握していきます。

本来、それはあってはなりません。
あくまでも、言葉が通じない者同士の、格闘の結果だから成立して
いるけれど、それで良いと考えるのは、旅行レベルの会話だけのはずです。

実は、語学学習においての最大の壁は、推測かもしれません。
私はそう思っているので、なるべく推測せず話を聞こうとしているのですが、無理です。
私たちの脳のシナプスは、一瞬でも何かをキャッチしたならば、
今までの経験を全力で反すうして推測を連鎖させていきます。
そして、それは止まることはありません。

この初心者の英会話と同じことは、実に、日常で日本語を話す者同士でも起きています。
日常生活では、大した支障はありません。
推測に瑕疵があれば、その時点で修正するだけです。

「思い込み」という言葉があるように、推測は修正されないまま、
小さな事故を起こすこともあります。
そして、大きな事故を起こすこともあるでしょう。

でも、それが私たちの情報処理の本質なのです。
みんな、勝手に解釈して、時々事故る。
これがコミュニケーションです。

知らない単語を言われて、「わからない」。
知っている単語を言われて、「推測」。
若干マシなのは、「固有名詞」・・・・・という感じでしょうか?

ちなみに、“サニーゴ”とは、ポケモンの名前です。
日本では、沖縄方面、鹿児島近辺にしか出現しません。
『ポケモンGO』をやっている人たちが、そちら方面に旅行に行くと、ゲットに躍起になるキャラクターです。狭い世界のお話です。

世界は、誤解を伴いながら広がってきました。
誤解は必然ですから、嫌がっても仕方がありません。

しかし、私は思うのです。
「ビジネスでは、それはうまくない・・・」と。

だから、
「いくらかは嫌がらないといけない」といつも思っています。
要は、そのあんばいの問題で、それはきっと人生の一側面だと
思います。

目次に戻る
このページを閉じる