■ハッピーになる方法
「人間は、反応していればいい」
私の持論である。
「微生物のように、ただ反応していれば、全てはうまくいく」
私は、本気でそう思っている。
極端に言えば、意思などいらないのだ。
ただし、この持論は大きな欠陥を持つ。
まずは、反応する力の問題。
ただ「反応すればいい」とは言うものの、 その“反応”ができない・・・という問題は大きい。
さらに、もっと大きな欠陥は、反応するための情報の問題。
多くの人は、知りたいことしか知ろうとしない。
脳のエネルギー消費を少なくするために、情報を選択する。
人によって環境から獲得する情報量には差がある。
このことは、当たり前のことに思える。しかし、重要事項だ。
実は、“反応”ができない問題の多くは、 情報選択問題の従属的な位置にある。
“反応”しないために、情報を“遮断”しているのだから・・。
だから、弱い人間は、情報の選択力が強い。
極端な“遮断”で生き延びようとする。
もちろん、大げさに考える必要のない情報“遮断”もある。
例えば、私は流行歌を極端に知らない。
テレビでお決まりの「昔これがはやりました」番組を見ていると、 妻にいつも驚かれる。私の思春期にあたる70~80年代の流行歌をほぼ知らない。
あの時代は、みんな同じ音楽を聞いていた幸せな時代だったというのに、おかしな話である。
そして、それを一番不思議に思っているのは当事者のワタシ。
でも、興味のないことに対する人間の“遮断力”というのは、 それほどまでに強力なのだ。きっと・・・。
エンタメ情報とか趣味の情報というのは、選択的であっていい。
そうでなければ、私たちは大量の情報に押しつぶされてしまう。
しかし、その“選択力” “遮断力”が人生の重要問題で発揮されて しまう。そういうことが常に起きている。これは怖いことだ。
「下段者、上段者の心わからず」という言葉がある。
56年も生きていると、私ごときでも下段者との遭遇が時々ある。
そして、“断絶”の深刻度に、天を仰ぐこともある。
私が、どんなに悩んでもどうにもならない。
選択権は、下段者にある。
私が何を言おうと、何の効用もないのだ。
いやそれどころか、力強く問えば問うほどに、相手の“遮断”する力は強まるのだから、放っておくしかない。
ちなみに、“遮断”には、身体的特徴がある。
顎が上がるのだ。
この間、会社の飲み会で部下が私に向って、 「社長の○○は、言い過ぎですよ!」的な発言をしてきた。
そして、部下の顎は上がっていた。
放っておけばいいのに、私も酔っている。
そこで、少し言ってしまった。
しかしながら、何の意味もない。
防衛している者を目の前に正面突破などあり得ない。
人は、自分の人生の“やり方”を守るために、全力を尽くすのである。
ちなみに、顎が上がるという身体的特徴は、中途半端な受け売りや『シロウト理論』を振りまく者の特徴である。
理論そのものの底の浅さは、本人の体が一番承知しているのだ。
最近、私には大きな悲しみがある。
それは、負けることが少なくなってしまったこと。
敬愛する上段者たちが一人ひとりと鬼籍に入り、 今の私には負ける相手があまりいない。
仕方がないので、別の場所に負けるところを求めた。
それが、ギターという楽器である。
楽器は、こっちが素直にならないと心を開いてくれない。
わかったつもりでいると、何も教えてくれないのだが、 ふっと1歩後ろに下がると、とんでもないご褒美を用意してくれる。
そして、こうした楽器の“態度”を十分に知りながら、 弱い私はそれでも楽器を前にして意地になってしまうことが多い。
おそらく、顎は大きく上がっていることだろう。
それでも、根負けして、ふっと深く頭を垂れると、 すごい扉を開いてくれる。そこには“連鎖”が待っている。
この原稿は、以前、 『Q&Aコーナー』で「運を引き寄せる方法は?」というご質問に、お茶を濁して答えなかったことをきっかけに書いている。
決して、この原稿ごときで「運を引き寄せる方法」について書くことはできない。
でも、その一端を書いておこうと思ったのである。
ただし、私は「運を引き寄せる方法」については、 まだ修業中のため、あまり知らない。
知っている多くは「運を悪くする方法」である。
そして、ここでの結論はもう書いている(運を悪くする方法について)。
顎を上げればいい。簡単である。
それだけで、情報量は減る。
確実に、都合の良い情報だけがあなたにもたらされる。
とても、ハッピーなことだ。
あなたの敵も確実に減る。
だって、上段者は、そんな人の周りには現れないからね。
ミジンコのようにシンプルに反応して生きていければ、人生は全う できるのに、なぜ人間はつまらないことになってしまったのか?
複雑なんて、全然いいことがないと思う。
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