2018年7月31日 第679号【第5週目 増刊号】 

1. TAROくんの独り言拡大版

■雨乞い

現在、苦境に立っている経営者がいます。
その彼に、私が今何かを話すとしたら、次の話になるかと思います。(これ、見てるかな?)


C.G.ユングと『黄金の華の秘密』を共著したR.ヴィルヘルムの中国での体験は、なかなか示唆に富んでいます。

彼が中国で活動の場とした地域が、数カ月にもわたって
雨が降らず、干ばつが猛威を振るっていました。
その状況は悲惨なもので、人々は祭礼を行うなどして干ばつの
悪魔を払おうと試みましたが、あらゆる努力は無駄でした。

そこで住民たちは、雨乞い師を呼ぶことにしました。
その雨乞い師は、遠くからやってきました。
彼は、年老いた、しなびた小男だったそうです。

彼は住民に言いました。
「どこでもいいから小さな家を1つ用意してほしい」
そして、そこに3日間こもったまま出てくることはありませんでした。

4日目。今までまったくなかった雲が空に現れ、大量のみぞれが降りはじめました。
その量は途方もないもので、季節外れであることも考慮すると
奇跡としか思えないものでした。

東洋人ならば、この話は不思議のままにしておくと思いますが、西洋人のヴィルヘルムは違います。大不思議を大不思議のままにできない致命的なセンスのなさを持っています(笑)。

そこで、ヴィルヘルムは雨乞い師に聞きました。
「あなたは、どうやってみぞれを降らせたのですか?」

彼は答えました。
「わしは、みぞれなんて降らせていない。あれは、わしの業ではない」

「では、3日間一体何をしていたのですか?」
ヴィルヘルムはしつこく尋ねました。

さて、雨乞い師は何と答えたでしょうか?


と、こんな話からはじめるかもしれません。

私は、コンサルタントという仕事をしていて
よく思うことがあります。

「え!?よりによって、あの人にそんなことが起こるなんて、信じられない」ということは、この世に絶対ない。

サラリーマン時代に融資担当だった時と、税理士だった時を含め、
常に、そう思っていました。

世の中には、
「あ、あの人らしいね・・・・・・」ということしか起こらない。
ニュースレターの5月号でも少し触れていますが、
世に言う“運”というのも微妙です。
運が良いとか悪い・・・ということさえも、その人物の“らしさ”と
強く関連しているように思います。

そして、私はこの話はすてきなことだと思っています。
だって、“らしさ”って、演出が可能なのですから・・・・・・・。

私が、このことに気付いたのは、サラリーマン時代のことです。
ある中堅企業の社長から、宴席に招待された私は、
数人の芸者も交えた場に戸惑いつつ、早く帰りたい気持ちを抑えて、その社長と飲んでいました。

すると、その社長、芸者の胸元に1万円札を数枚入れるのです。
芸者は1人ではありませんから、おそらく10万円以上のお札が
彼女たちのものになったと思います。

この社長の行為を見て、私は「実に、この人らしい」と思いました。
私は、この会社が赤字続きで、財務諸表が年々壊れていく様を
見ています。
そのことを知っている私の前でさえ、こうした行為ができる。

私は、そのことを考えて思いました。
「だから、赤字なんだ・・・・・・・」

彼(社長)は、赤字の理由をいろいろ言います。
その理由の多くは、「環境が悪い」と言うのです。
しかし、そうではない。私はそう確信しました。
なぜなら、上述の雨乞い師の話を知っていたからです。

雨乞い師の話を続けましょう。


雨乞い師の答えは、次のようなものでした。

この土地は、秩序が乱れていた。
天候の秩序すらあるべき姿が消えていた。
だから、なにもかもが道理に反することが起きていた。

おかげで、この土地に来たわし自身の自然な秩序も崩れて
しまった。
そこで、わし自身がもとの「道」に戻るのに3日間を待たねば
ならなかった。


「環境が悪い」という赤字の理由を、このヴィルヘルムの話に
当てはめれば、「土地の秩序が乱れている」ということになります。
そして、その状況は、社長の“らしさ”から来ている。

でも、雨乞い師は教えてくれています。
「だったら、その“らしさ”を正常なものにすればいい」

それで、全ての環境が変わるのです。

そこで、私はその実験をはじめました。
実験の内容はここでは書きませんが、“らしさ”の演出の効果は
相当なものでした。最低限、私にはそう見えました。
ただし、雨乞い師が3日間かかったのですから、凡人の私には
長い年月が必要でした。それに凡人は、ちょっとしたことで
本来の“らしい”に戻りますからなおさらです。

でも、できることは1つしかありません。
自らの習慣を変えれば、環境が変わるのだとすれば、
それは運を変えることでもあるのですから・・・・・・・。

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