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『人のセックスを笑うな』

空いた時間とタイミングがあって、飛び込みで映画館に入る。

どんな映画なのかも、監督もわからない・・・。

でも、はじまって数十分で監督の名前は想像がついた。

「こりゃ、何も知らないで入ったにしては儲けもの・・」
と思った。

監督の名前は、

井口奈巳

あの『犬猫』で、モンタージュをほとんど使わないカットの連続で恋愛映画を作った奇才だ。

この映画でもアンチ・モンタージュは貫かれる。
それもさらに磨きをかけて・・・。

日常をつなぐと映画になる。
それを証明して見せたカメラと音。
演出を廃するという演出は、リアルの部品があちこちに配置され快感を起こす。

観客は、モンタージュなカット割りがない映画に漂い、本来映画はこういうものだと認知するに至る。
モンタージュはすばらしい発明だろうけど、そこに入る「意図」には過剰を感じることがある。だから、余計なお世話のないカット割りに慣れるとハリウッド的モンタージュが暑くらしく感じる。

この映画の「不足」は、監督 井口奈巳の「過剰」だ。
そして、観客にとっては、この「不足」が違和感になったり、主張に思えたり、策略に感じたり、名作に感じたりする要素になる。

年賀状の場面だけで使われる「過剰」なモンタージュは、監督が誰であるかがわからないと奇異なシーンだけど、あの嫌みだけがこの映画の「過剰」。んー、おもしろい。

この映画は、今年の日本映画の重要作だ。

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