2017年2月28日 第603号

目 次
  1. TAROの独り言
  2. TAROくんの独り言拡大版
    ・・・1,800円
  3. まーけ塾レポート
    ・・・5. 休廃業・解散 最多・・なのに
  4. Q&A
    ・・・先日の採用面接で
  5. しょせん人の言葉  しかし、気になる言葉
    ・・・『ライムベリー「because of you」より』
  6. 砂漠の中から本を探す
    ・・・『「世界一速い会社」の秘密』
  7. 構造で映画を見る。時々、いいかげんに映画を見る。
    ・・・『沈黙 サイレンス』
  8. TAROの迷い言
2. TAROくんの独り言拡大版

■ 1,800円

「すべては、1,800円がいけない・・」と私は思いました。
それについて、昨年12月6日のブログを一部引用します。


長野と新潟の県境で採れる最高のそば粉で作った
素晴らしい蕎麦がある。
ちなみに、店では食べられない。

この蕎麦を毎年手に入れて食べるのは、
私の幸せの一つになっている。
秋のうちに山で取ってきたクルミの出汁で作ったツユにとても合う(長野に行くと、クルミ出汁を味噌で味付けた甘いものが出るが、あれは、私はダメである。あれとはまったく別物)。

その最高の蕎麦を、今年から作らないと連絡が入った。
高齢のため、やめることにしたそうだ。
「今年のはじめに食べた蕎麦が最後だったのか・・」
と天を仰いだ。


先月も、この『TAROくんの独り言拡大版』で
同じことを書きました。


昨年の10月に老舗の飲食店が店を閉じました。
私の住む地方都市では、
またおいしい店が一つなくなりました。

私の住む街は、すでに死に体です。
私が子供の頃は、多くの名店がありました。
しかし、小さな店は後継者がいないので、
次々となくなっていきます。

昔、繁華街に、おいしい焼肉屋がありました。
夫婦二人でやっているお店で、
この店の肉の味付けは独特でした。
子供の頃の体験は絶対化しますから、
言い切ることはできませんが、
私はこの店の味付けを超えるものに
出会ったことがありません。


この先月の文章では、「小さなお店は、味一発勝負。
利権はありません。だから、続かなくて当然です」と書きました。

しかし、最高の蕎麦が食べられなくなった時、私は思いました。
「1,800円がいけない」

家族5人でも一人ひとりがたっぷり食べられる旨い蕎麦の価格が
1,800円というのがおかしいのです。
これが10,000円なら、後継者が現れたかもしれません。

この蕎麦は、20,000円でもかまわないと思います。
世の中は、ふざけた蕎麦ばかりですから、別に20,000円でも
売れるはずです。
そもそも、絶対の旨さですから、価格弾力性なんてないのです。

世の中には、ほぼほぼ価格弾力性がないのに、
安い価格で売られているものが結構あります。

特定ジャンルの本などは、典型でしょう。
日本経営合理化協会の牟田學さんは、そこに目をつけてうまく本を
売りました。

しかし、出版社にはもう15年以上前からこのことを主張していますが、彼らは言うことを聞いてくれません。
どうも日本経営合理化協会は特別だと思っているらしいのです(笑)。

ただし、価格弾力性がない商材といっても限度はあります。
今、例にした日本経営合理化協会の最近の出版は、独占的な内容ではないうえに、価格に品質が追いついていません。
もはや、ビジネスモデルとして終わっている感じです。

いずれにしても、安さを優先順位の筆頭にしてしまった時代の雰囲気が多くのものを破壊してしまいました。
そして、もはや、元には戻れません。
継承が途絶えれば、再現はあり得ませんから、
後は、私たちの記憶の中だけです。

「ちゃんと応援しないと、良い仕事は残らない」
このことは、一人の消費者として肝に銘じておかないといけませんね。

今は、クラウドファンディングのようなものもありますから、
応援の方法は以前よりもバリエーションが出てきました。
しかし、そういったものは一過性のものですから、
もっと自分の生活に必要なものは、過剰に愛さないといけません。

ただし、私が過剰に愛そうとしても、相手にその気がないとどうにもなりません。
例えば、私は中学生の頃から、あるミュージシャンをずっと愛し続けていますが、彼らは、ちゃんと「愛して!」と表現してきます。
それも、彼らは60歳を過ぎてから、若い頃よりも露骨に
「愛して!」と言ってきます。
そして、私は「カワイイ奴らだ・・」と思って、
彼らの試みに乗っかっています。

ところが、我が愛する蕎麦を作る職人さんは、何も言いません。
ただの白い箱に蕎麦を入れて、「早く食べてね」と言うだけです。

これでは、愛しようがありません。

・・・と、ここまで書いたら、我が愛するミュージシャンから
「俺たちのことどれだけ愛しているのかい?」パッケージが
届きました(本当に)。
価格は10,000円。
音質が高まり、レア音源も加えられていますが、
別に今さら買う必要はない代物です。
でも、「愛して欲しい」と言うから買うのです。

この話をズバっとまとめるつもりはありませんが、商売って結局、
愛だと思います。
ビジネスだって、相思相愛じゃなきゃ成立しません。

でも、多くのケースは恋人同士になっていない。
どちらかというと、結婚して10年経った夫婦みたいな感じです。
お互いが、お互いを必要なのに、それぞれに要求するばかり。
相手の努力が当たり前にしか感じなくなってきて、
そして、どこかでどちらかが去るのです。

私は、1,800円を当たり前と思ってしまったゆえに、
今、大事な恋人を失ってしまいました。

これを反省して、相手が「愛して」と言わなくても、
私は積極的に愛していこうと思います。

そして、私も言います。
「もっと、愛して!」って・・・・・・。


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