当社のセミナーは、基本的に、商品としての完成度を落とすことで
成立させています。
なぜならば、完璧な商品にするとウソが入るからです。
私が扱っているジャンルは、そもそも形にできないものです。
しかし、形にしないと商売としては成りたちません。
そこで、世の中には、形にした商品が多く出回っているわけですが、
形にすることで、純度は落ちてしまいます。
純度が落ちた方が、商売としては儲かることになっていると
いうわけです(笑)。
それを素直にやっておけばいいのですが、これができません。
何も考えないでやっておけば、波風も立たないし、誤解も与えないし、
そもそも仕事は楽になるし、とてもハッピーなのです。
でも、それができません。性格とはそういうものです。
そして、時間通りに終わらない・・わけです。
基本的に、資本主義とは相性が悪いものを扱っているのですから仕方がありません。
そこで、「記号のテキスト化」を意図的に行っているのですが、
この件について気づいているお客さまは、わずかです。
“テキスト”という言葉は、本来のラテン語の意味【織り物】として使っています。
「テキスト」は、「言語」「文章」「語られたもの」というような意味で主に使われています。
こうした使い方の場合、一つの「テキスト」は、その一つのもので完結し、完成しているように考えられがちですが、
本来、「テキスト」とは、常に織りなされていくものであり、決定されていないところがミソです。
商業系セミナーの多くは、一つのプログラムで完結していますが、
私は、それを拒否しています。
・・・というか、完結させたら、ウソになると考えている
わけです。
ですから、自分としては、誠実なつもりです。
しかし、おそらく、私のような行動を、世間が誠実と見ることは
稀だと思います。
ところで、「テキスト」です。
例えば、5月に行った『映像で考えるセミナー』の内容は、
その一ヶ月後に行った『VIPミーティング』の内容と織り物に
なっています。
最初からそう企画されているわけです。
2つのセミナーは縦糸です(これだけじゃないですけど・・)。
つまり、同じ『VIPミーティング』の参加者でも、
『映像で考えるセミナー』にも参加している人と不参加の人では、
その内容が違って見えるはずです。
これも、ある面、不誠実に見えると思います。
「ちゃんと、『VIPミーティング』の内容は、そこだけで完結
させろよ」と言われれば、それはその通りです。
しかし、「そんなことは可能なのか?」と真面目に考えてみれば、
そんなことはあり得ないことです。
それを望む人の気持ちはわかりますが、絶対に無理です。
そして、私はその件に関してウソが言えません。
テキスト=織物なのですから、意図しようが意図しまいが、
それは起きるはずなのです。当たり前ですよね。
そして、私は、その事実に対して、自覚的なだけなのです。
世の中に、「全集」というものが存在するのは、
その自覚があるからで、実は、有名人ではない市井の人であっても、
「全集」という概念は有効なのだと思います。
ちなみに、横糸は『Dファクトリー』や 毎月のニュースレターです。
そして、
有料メールマガジン『週刊 岡本吏郎』も若干その役割を担っています。
そもそも、あるテキストの意味の理解には、
それを別のテキスト(群)との関係のなかに置き直すしかありません。
そのために、それぞれのセミナーや『Dファクトリー』のようなものを
空間的に、時間的に配置して、無限の織り物を作っていく。
その範囲はやっている自分にもよくわからない・・ということに
なっています。
5月の『映像で考えるセミナー』は、3年前の『モンゴルセミナー』とリンクをしていき、
『モンゴルセミナー』参加者は、あの場で起こった事態の意味をさらに更新したことと思うのですが、
それは別に意図的なわけではなくて、必然として起こります。
2018年からはじめた『戦略セミナー2020』のシリーズは、
新しい縦糸を一本織りなしていこうというものです。
どんどん、わかってくれる人しかついて来てもらえない状況になっていますが、
そもそも商品ではないので仕方がありません(笑)。
最後に、ある若者(当時)の一言でこの文章を締めます(若い人の中に、こういう発言をする人が時々います)。
「ボクは、岡本さんのコンテンツを一部だけ良いとこ取りする人たち(おじさんたち)の気持ちがわからない。
総取りしないと意味が見えてこないのに、どうして一部だけを拾っておいしい思いしよーって思うんですかねー」
私「あー、それを人から言ってもらったのは、うれしいなー。 でも、自分でそれを言っちゃったら、お終いだしね・・」
今回の文章は「それを自分で言っちゃった」わけで、問題多いですけど、大事な内容だと思います。
私なんてどうでもいいですが、みなさんが師事している識者のテキストと対峙する時は、重要な概念だと思います。
それも、インターネット以後、この概念はさらに重要になっています。
(『週刊 岡本吏郎』2017年8月22日 第628号の内容を改定して掲載)