【TAROのお気楽極楽小説】

2004/04/12(月) 09:56

第一章 東京物語・・・。

(1)
「ここはどこだ?」
何か見たような景色。
しかし、どこだかわからない。
さっきまで家族と子供の誕生日を祝っていたはずなのに・・。
ここはどこなのか?
「寒い」
シンシンと寒さがしみる。
子供は動転して泣き。
妻は、起こったことの意味がわからずに、ただアゼンとしている・・・・・。
まずは何をすべきか、冷静に考えようと私は努力しようとしている。
しかし、もう一人の自分が「ムダだよ・・」と笑う。

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「お父さん、今日は美香の誕生日なんだから早く帰ってきてよ」
「わかったよ。なるべく早く帰ってくるよ」そう言いながら家を出た。千歳烏山の駅まで自宅から早足で15分。今日は出際に足止めを食ったから、少し走らなくてはいけない。
少し汗ばみながら、団地の通りを走る。
温暖化が言われて久しい。冬とはいえ、暖かい日が続く。

朝の京王線は、いつも満員だ。
こんな満員電車は避けて、朝早く出ればいいことはわかっている。しかし、毎日の残業でそれもままならない。結局はギューギュー詰めの電車に乗ることになる。
私は読書が好きだが、さすがに朝の電車で本を読むのは勇気がいる。別に誰が怒るわけでもないが、一人に割り当てられる空間を考えると、本を読むことは人迷惑のように感じるのだ。
だから、会社までの約40分。ただ、意味もなく電車に身をゆだねる。
「この40分を少しでも有効に使う手はないのか?」と考えることもいつの間にか止めてしまった。どうせ、揺られるしかないのだ。この40分がもったないないと思ったら、イライラするだけだ。
そうやって、25年がたった。

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