【ビジネス万有引力の法則】

2004/05/20(木) 02:38

「ブータン」

ブータンの「国民総幸福量」が話題になっている。
「国民総生産」のような数字的な経済評価ではなく、「幸福度」という観点で経済を測定しようというのだ。
何だか、理想主義のように聞こえてしまいそうだけど、そのブータンの経済成長が著しい。とうとう国民平均所得が南アジア地域のビリからトップになった。(「選択」5月号より)

「国民総幸福量」とは、「人間の物欲は限度を知らず、身勝手な欲は不均衡と自然破壊を起こす。自我の抑制とすべての生物の思いやりなくしては、幸せに必要な環境を築き持続することが不可能だと言う考えがある。(「選択」5月号より)

つまり、目先で考えれば木材輸出をしてしまうところを、自然保護を優先して輸出を禁止するなど、トコトン長い目で考えましょうという経済なのである。

こういう経済に世界中が注目するのも時代である。
時代の変化は、粛々と絶え間なく続くものなのだ。
「明日からこうなります」と言って変わる消費税の表示方法のようなものとは違う。
だから、私達は変化に気づくことはない。ある日、気づいてみると「変わっていた」というのが世の中だ。

だから、ブータンの(今のところの)成功が、そのまま私達のすべてを変えるわけではない。しかし、これが時代だ。

何年先の「時代」なのかはわからない。
でも、時代は、その方向へ動き始めた。
きっと、そのうちスキー場からセンスの悪い音楽も消えるだろう。
海に行くと聞こえるジェット・スキーの爆音も消えることだろう。
当然、今だけの物は売れなくなるだろう。
時間が経っても価値の減らないものだけが残るだろう。

私が耐久消費財を嫌いなのは、正にそこにある。
時間とともに価値が減るではないか。
この日本では耐久消費財にお金を使わないと言う消費行動はけっこう利口な消費行動だ。そこで、いつも自動車を槍玉にあげることになる。

でも、自動車が趣味の人は、自分の金銭的実力に合わせていろいろな車に乗ればよいとは思う。趣味の世界は私が理屈でとやかくいう世界ではない。ただ、趣味ならば、購入したよりも高く売ると言う思想があるべきだと個人的には思う。
人の道楽とはそういうものではないか?

だから、私は趣味の道具を買うときは、それが買った値より高く売れるか売れないか購入の尺度にする。最悪の場合でも同価格で売れるかを考える。まぁ、いつも思ったとおりにはならないが、道楽の世界とはそういうものだと思っている。道楽の世界で、タダの消費をしてしまうのは悲しいではないか・・。

そして、日本人にはそういう感覚が昔からあったように思う。
新撰組の近藤勇が京都に入るとき、探した刀を「虎徹」と言う。
20両で手に入れた彼の「虎徹」は贋物だったが彼はこれを気に入って使った。

この時代の日本は資本主義ではない。
しかし、相場はあった。米相場が典型だが、それ以外のものも価格が動いた。
「虎徹」も同様だ。「虎徹」は、100両以下では手に入らなかった。
長曽祢虎徹が作った年齢によっても価格は違った。
更に、今だって模擬刀が30,000円もする。
こういう世界は資本主義が滅んだってなくならないだろう。

そんな消費社会ではない世界が近づいている。
きっと、消費も生産も根本から変わるはずだ。
それがいつかはわからない。でも、方向は決まった。

時代に対して早すぎるのは、よくないことだ。
だから、ビジネスは「今」の視点で見たい。
でも、行く方向だけは見ながらいきたい。
そして、耐久消費財を中心とした消費については、そろそろ卒業し始めてもいいと思う。

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