『年末年始のごあいさつ』 2017 - 2018

年末のご挨拶(2017年末)

  • 幸福とは、熱中である

    (T・E・ロレンス)

    このロレンスの言葉は、とても陳腐です。
    21世紀に生きる私たちには、あまりにも自明です。

    では、お聞きしようと思います。

    「幸せですか?」

    そして、次のように続けましょう。

    「今年1年、何に熱中しましたか?」

    …………………………

    1958年にアメリカの陸軍研究所で、ある実験が行われました。
    その実験では、脳も神経系もない単細胞生物が研究材料として使われました。

    単細胞生物を使って行ったことは2つです。

    1. 簡単な意地悪をする
    2. 複雑な意地悪をする

    単細胞生物と言ってもバカにはできません。
    彼らのほとんどは学習をして、人間が放つ意地悪に対応しました。

    しかし、対応できたのは、1.の簡単な意地悪だけです。
    2.の複雑な意地悪に対応できたのは、ほんの少数でした。

    この話の重要な点は、この後です。
    簡単な意地悪ばかりを繰り返された単細胞生物たちは、そのうちに狂い始めました。
    死に向かう……という表現が決して大げさではない行動を取り始めたのです。

    研究者たちは、その狂った行動の原因を、「飽きてしまったから」と結論づけました。

    単細胞生物が飽きる……?
    にわかには信じられないことですが、彼らはそう結論づけました。

    ところで、2.の複雑な意地悪を繰り返された方です。

    彼らは1000回の繰り返しでも飽きることはなく、
    学習能力を高め目的を獲得していきました。

    …………………………

    もし、人生の合間に、少しでも“退屈”の文字が見えるとしたら……。

    きっと、それは簡単な問題ばかりを解いているからです。

    学習のプロセスに十分なエネルギーを注ぐこと。
    冒頭のロレンスの言葉は、自明のようですが、
    それを本当にわかっている人はわずかだと思います。
    だって、単細胞生物ですら、少数派だったんですから……。

    皆さま、本年も大変お世話になりました。
    今年一年も皆さまのおかげでたくさんの良いご縁をいただき、
    充実した一年を過ごさせていただきました。
    来年も今年同様にお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。
    そして、皆さまが、十分なエネルギーを注いだ人生を満喫されることを
    お祈り申し上げております。

    ありがとうございました。

    2017年12月28日

    岡本吏郎

年始のご挨拶(2018年1月1日)

  • あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いします。

    「今年も1年無事に・・・」という言葉があります。
    この言葉が毎年使われるほどに、私たちはいつも事件を恐れています。
    事件は突然起こります。
    ドラッカーが言ったように、どんなに準備をし尽くしても、
    トラブルはそれを超えてやってきます。
    完全に避けることはできません。

    では、突然やってくるのは事件だけでしょうか?

    そんなことはありません。
    あらゆることが、事件と同様に突然訪れます。
    もちろん、ワクワクするようなこと、幸せな気分になることも・・・。
    むしろ、幸せなことの方が突然やってくる。そっちの方が事実のような気がします。

    私たちは、いつも合理的に考え、行動をしているつもりです。
    そして、今こうしていられるのは、日頃の思考と行動のおかげだと、
    どこかで思っています。
    でも、本当は、そんなことはなくて、あらゆることが突然起きています。
    さらに、それがどこから来ているのかもわからないのです。
    単純な「因果」ではない。
    そのことだけは私たちは経験上知っています。
    そして、最後の瞬間に働く「他の力」のことも・・・・・・。

    ですから、そもそも私たちが今こうしていられること自体が事件と言っていい。
    きっと、私たちそのものが事件なのです。
    やって来るものはやってくるし、
    やって来ないものは、どんなに待ってもやって来ない。
    世の中って、結局、それだけのことで、私たちが信じ込んでいる
    “自らの力”というものはとてもとても小さなものなのだと思います。
    でも、その事実を冷静に見つめると、ある種の希望が湧いてきます。
    やれることに集中すればいい。
    ただ、それだけ。
    この一事に気付くのです。
    ただし、その「ただ、それだけ」が実に難しい・・・。
    そして、世間にはびこる“救い”の方に目を奪われてしまいがちです。

    また1年がはじまります。
    再び、同じような1年が過ぎることと思いますが、それでも、
    つまらぬ“救い”に固執しなければ、たくさんの素敵な“突然”が舞い降りるはずです。

    今年もよろしくお願いします。

    2018年1月1日

    岡本吏郎